当院では、ワンちゃん・ネコちゃんの身体的負担の軽減やストレス軽減をめざすため、腹腔鏡を導入しています。
腹腔鏡はどんなもの?従来では、手術を行うために2~10cmの切開が必要になります。傷口が大きければ大きいほど、回復にも時間がかかりますが、腹腔鏡手術は、0.3~1.0cmの穴を2~3箇所切開するだけで手術を可能とします。
腹腔鏡には専用カメラが搭載され、テレビモニターに拡大された内部が鮮明に映し出されるため、従来の開腹手術よりも患部や周囲の状況を詳細に確認できます。細かな手術操作が行えるので身体への負担を抑えられ、従来の開腹手術よりも早い術後の機能回復が望めます。
メリット
- ●切開範囲を小さく抑え、ワンちゃん・ネコちゃんをはじめとする動物の負担を抑えられる
- ●患部を拡大した状態で確認できるので、より精密な手術操作を可能
- ●臓器が外気に触れることをできる限り抑えられ、酸化・乾燥・癒着・感染リスクを減少させ、胃腸の運動機能も早期回復が望める
- ●身体の大きなワンちゃん・胸の深いワンちゃんなどは、卵巣や子宮に大きな負担をかけることなく手術が可能
デメリット
- ●腹腔鏡を取り扱うには技術や知識も必要になり、精密な操作能力が求められ、手術時間が延びる恐れもある
- ●腹腔鏡では止血が困難であり生命の危険が生じる場合には、開腹手術に切り替える可能性がある
- ●精密な機器・設備を必要とするため、開腹手術よりも費用がかかる
避妊手術
望まない妊娠を未然に防ぐため、腹腔鏡での手術を実施しています。お腹に小さな穴を3箇所あけて、腹腔鏡専用カメラや鉗子を挿入して卵巣・子宮を摘出します。
腹腔内潜在精巣摘出術
子犬や子猫が成長するにつれて、お腹の中や鼠径部の皮下にあった精巣が、徐々に陰嚢の中に移動していくのですが、陰嚢の中に納まることなくある状態を「潜在精巣」といいます。そのままにしておくと腫瘍になる可能性が高く、手術をして陰嚢の中に導く、または摘出する必要があります。
潜在精巣の場合、精巣自体が未発達であることが多く、開腹手術で探し当てる行為は身体に負担がかかります。しかし、腹腔鏡手術であれば開腹範囲を小さくでき、患部の状態をモニターで確認しながら手術できます。
肝生検
嘔吐や食欲不振などの症状が長引いていたり、血液検査で肝臓の数値に異常が認められたりした場合は、レントゲン撮影や腹部超音波検査などを実施しますが、さらなる検査が必要と判断した場合に、腹腔鏡手術による肝生検が検討されます。肝臓の状態を視診でき、肝臓の一部を切除して、顕微鏡で肝臓の状態を確認していきます。
腎生検
年齢を重ねたワンちゃん・ネコちゃんは腎臓病になりやすく、腎臓からタンパク質が漏れ、お腹に水が溜まったり、血栓ができやすくなってしまったり、腎不全になるリスクを伴う蛋白漏出性腎症(PLN)といわれる状態になってしまうケースも少なくありません。血液検査による腎臓の数値が高く、腹部超音波検査などを実施した際に、腎臓が腫れていびつな形になっていると腫瘍を疑い腎生検が実施されます。
従来の生検ではお腹越しに針を刺して腎臓の一部を採取する針吸引生検(FNA)が実施されていましたが、腎臓は血流量が多い臓器なので、大出血を起こしてしまう恐れがあり、リスクを伴う検査方法でした。腹腔鏡手術であればお腹越しに針を刺す必要もなく、腎臓の状態を視診できるだけではなく、リスクを抑えながら生検が可能です。
膀胱結石摘出術
避妊手術の次に腹腔鏡手術が多く実施されているのが、膀胱結石摘出術です。
開腹手術では、膀胱粘膜の中にある小さな結石を直視で取り除く必要があり、取り残してしまう恐れも高くありました。腹腔鏡手術であれば、膀胱粘膜内部を拡大した映像をテレビモニターで確認できるので、取り残しがないように努めています。また、必要に応じて膀胱の組織生検も可能です。
当院は、動物専用の内視鏡のご用意があります。
おもに異物を誤飲・誤食してしまったり、慢性的な嘔吐・下痢の症状があったりした場合に内視鏡検査の実施が検討されます。全身麻酔の必要がありますが、ワンちゃん・ネコちゃんの負担を抑えて検査できるメリットがあり、レントゲン検査やエコー検査に加えて、さらに消化菅粘膜の病変を視診する必要があると判断した場合に活用される検査方法です。
内視鏡検査で可能なこと
- ●誤飲・誤食してしまった異物を取り除く(サイズや形状によっては困難なケースもあります)
- ●消消化管粘膜の視診や粘膜組織の一部を採取して病理検査の実施
- ●経口摂取が困難な場合に、胃瘻チューブ(流動食などを胃に直接入れるチューブ)の設置
内視鏡検査が検討される症状・状況
- ●異物を吐かせて取り除けないと判断した場合
- ●慢性的な嘔吐・下痢をはじめとする消化器症状がある場合
- ●食後に吐いてしまう「吐出」の症状がある場合
耳専用の内視鏡です。従来の手持ち耳鏡では、鼓膜や耳道内の状態を視診できる範囲には限りがありました。
ワンちゃんの場合は特に外耳炎に罹患しやすく、なかなか完治が見込めないケースもあります。そのような場合には、耳道内の状態を精密に把握した上で評価する必要があります。
耳道内に異物が入ってしまったり、固まった耳垢があったり、腫瘍が認められたりする場合、ビデオオトスコープを耳に挿入し、鉗子やカテーテルを活用して、異物の除去・耳道内の洗浄が可能です。
ビデオオトスコープは、耳に挿入するだけなのでワンちゃん・ネコちゃんをはじめとする動物の負担を抑えながら精密な検査が行えます。しかし、耳の奥の確認・処置を行う際に不快感を与えてしまう恐れもあるので、場合によっては鎮静処置・全身麻酔が必要になります。
また、外耳炎に対する検査・処置だけではなく、耳道の汚れを確認した上で洗浄を実施し、どのくらいきれいに洗浄できているのか確認も可能ですので、お気軽にご相談ください。
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治療法の選択
当院ではワンちゃん・ネコちゃんに考えられる治療法をご提案させていただき、ご家族と一緒に治療方針を決めていきます。
手術が必要と診断された場合は、次のステップに進みます。 -
術前検査
手術を行う前には必ず麻酔が適用するのか、手術を受けられる状態であるのかを検査します。
主な検査項目は、身体検査・血液検査・レントゲン検査・腹部超音波検査など、ワンちゃん・ネコちゃんの状態に合わせて、検査を進めていきます。 -
手術内容のご説明
術前検査の結果報告や手術内容、手術や全身麻酔などのリスクについてもお話しいたします。
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先進的な設備で精密な手術の実施
当院では先進的な機器・設備を導入し、経験豊かな獣医師が手術を担当いたします。
また、使用する医療器具の滅菌や機器のメンテナンスなども行い衛生面や安全性に配慮しています。 -
術後の細やかなケア
術後の体調管理はとても重要となります。様態が急変していないのか、体温や排泄の有無、食事はできているのか、動物看護師が細かくアフターフォローしていきます。
退院されてからも必要に応じてご自宅での様子をうかがい、ご家族が不安に思うことがないか、お電話させていただきます。
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来院
去勢手術を検討しているMOCAくんに、ご家族と一緒に来院いただきます。
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診察
獣医師から手術の流れをご説明させていただき、手術のメリット・デメリットやリスクも含めてご説明させていただきます。
また、簡易的な身体検査を実施し、手術が受けられるのか、気になる箇所はないのか、確認していきます。
MOCAくんの場合は、乳歯遺残があることが判明したので、全身麻酔下で実施する去勢手術と同時に、乳歯の抜歯も行う治療の流れをご家族と一緒に決め、手術日は3週間後となります。
※乳歯遺残・・・乳歯が抜けずに残っている状態で、永久歯が重なり合うように生えることもあり、食べカスなども溜まりやすく、歯周病などのリスクが高まるために乳歯の抜歯が望まれている状況です。
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術前検査
手術1週間前には術前の検査を行います。
身体検査・血液検査などを実施し、健康状態をチェックしていきます。検査結果は当日お伝えでき、獣医師から手術前日の過ごし方や注意事項、手術当日の来院時間をご案内いたします。 -
入院
手術当日、時間通り10:00に来院しました。
健康状態をチェック・入院の手続きを行い、手術を受けるために点滴を行います -
手術の実施
お昼に手術を行います。手術終了後にお電話にて状況をお知らせし、お迎え時間をご家族にご相談させていただきます。
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退院
術後の傷口の状態や、全身の健康状態を改めてチェックします。
獣医師からも手術内容を改めてご説明し、ご自宅での過ごし方、抜歯の日程を確認して、ご自宅にお帰りいただけます。