鳥好きなら大体知ってるメガバクテリア|これを機会にメガバクテリアについて知ろう

2026/06/22

 「うちのインコがずっと吐いてるんです!メガバクテリアの検査をしてください!」

まだ私が新人獣医師で仕事を始めたばかりの頃、あるインコさんの家族が突然こんな事を言われました。

 「え?なんでそんなピンポイントで知ってるの?メガバクテリアってそんなに有名なの!?(心の声)」

 お恥ずかしながら鳥を飼ったことがない私にとっては驚きでした。教科書で最近学んだ事が家族の口から出てきたんですから。

 今となっては「インコの嘔吐」と聞けば、考えられる病気のリスト(いわゆる鑑別疾患)のトップに上がるほど

すっかり聞き馴染みになりました。

 ということで今回は鳥を飼っている方なら一度は聞いたことがあるメガバクテリアについてしっかり解説していこうと思います。

 早期発見に役立つ情報も盛り込んでいますのでぜひ最後まで読んでみてください。

 

メガバクテリアって何?

 メガバクテリアについて知らない方も多いと思います。大丈夫、ここで一緒に勉強しましょう。まずメガバクテリア、正式名称をマクロラブダスMacrorhabdus ornithogaster)と言い、他にはAGY(Avian Gastric Yeast)という呼ばれ方もします。ここでは“メガバク”と呼びますね。

 このメガバクですが、一定数の鳥の胃の中に住み着く“カビ(酵母菌)”です。

 もっと正確に言うと、鳥の持つ2つの胃、腺胃(ヒトの胃に近い構造)と筋胃(いわゆる砂肝)の間でひっそりと暮らしています。

 主な感染経路は雛鳥時代の親鳥からの口移しの他、同居の感染鳥の糞や求愛のための口移しなどの経口感染です。

 とはいえ、感染したら皆が発症する訳でもなく、不顕性感染といって無症状の子もいます。

これが厄介で、症状が出なければよほど積極的な検査をしない限り感染の有無を判定するのはほぼ困難です。そのため、こういう子が知らず知らずのうちに他の子にカビを移している場合もあります。

 

感染率は?感染しやすい鳥はいるの?

 日本で飼育されている鳥さんでメガバクがよく見つかるのは、セキセイインコ、コザクラインコ、マメルリハインコ、ボタンインコ、オカメインコなど…よく見かけるインコさんたちですね。つまり身近にいるインコの殆どは感染しうるということです。

 実際の感染率ですが、これは文献によって数字に差がありますが、セキセイインコで25%、オカメインコで4%と言われています。

そこからさらに症状を示すのがおよそ75%程で、逆を言えば25%は無症状という訳です。

 

どんな症状が出るの?

 一言で言うと、気持ち悪くなります。

胃を荒らすカビですからね。大抵は吐き気(いわゆる“あくび”)や嘔吐といった胃炎症状に始まり、場合によっては下痢や黒色便、ひどくなると栄養失調に陥り亡くなるケースもあります。

 

 この症状の重症度も色々で、お薬ですんなり良くなる子もいれば、慢性胃炎になりその後も度々胃が痛くなる“胃炎持ち”になったり…

 基本的には早期に診断がついて治療することができればすっきり治るので、怪しいと思ったら早めの検査でカビを見つけましょう。

 

じゃあメガバクの検査って?

 冒頭でもお話しした昔話の「メガバクの検査」ですが、これはいわゆる「糞便検査」の事です。

診察の最初に家族にいろいろと聞いているうちに、大抵の鳥は一個や二個ウンチをしてくれます。

これをちょこっと取って顕微鏡でチェックするのです。

しっかり感染していればこれだけでほぼ診断できます。

 顕微鏡を覗くとこのように周りの菌に比べて明らかに大きいのがメガバクテリア…

このカビがメガバク(大きい菌)と言われるゆえんです。

 ただ、ヒトの目で確認するためどうしても“見つからない”こともあります。

取った便にたまたまメガバクがいないことも起こりえます。

そのため一回の検便で見つからなくても、また一般的な治療でなかなか良くならない場合などは何回か検査しておくと良いです。

 その他の方法として便を外部の検査会社に送ってPCR検査してもらうという手もあります。費用と時間はかかりますが、これが一番確実な方法かもしれませんね。

 

メガバクと診断されたら?

 「あなたのインコさん、メガバクテリア感染症にかかっています」

こう言われても悲観する必要はありません。

メガバクは厄介なカビですがしょせんはカビ、いわゆる抗真菌薬というお薬が効きます。

飲み薬も注射薬もあるので、その子の状態に合わせて治療を選択することも可能です。

 ただ一つ注意点が…この病気、治療期間がとっても長いんです。

 お薬を開始してから1週間ごとに糞便検査を実施し、3~4回陰性(顕微鏡でメガバクが見つからない)が確認できるまでこれを続けます。治療期間は平均1ヵ月、その間はもちろんお薬を飲み続けてもらいます。

 また、なかには第一選択とされている抗真菌薬に耐性をもったメガバクもいるので、その場合はお薬の追加が必要になります。

そして意外と大切なのが、家にいる他の鳥さんから隔離するということ。

最初に書いたように、感染鳥からの口移しや排せつ物の経口摂取で他の子に移してしまう可能性があるので、治療が終了するまでは他の子に接触させないようにしましょう。

もちろん人が移してしまうこともあるので、感染鳥を触った後は入念に手洗いしましょうね。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

獣医師 小林

 
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